第7回 マヌーバトレーニングについて

マヌーバートレーニングについて

私はマヌーバートレーニングに参加したことがあります。マヌーバートレーニングとは、意図的に翼を潰し,回復させる動作を何度も繰り返して、こんな潰れだと,こんな状態になる、こんな潰れだと,こんな状態になる、ということを繰り返し体験させる訓練です。

潰れからの回復動作は、何度も経験して始めて、できる操作です。

マヌーバートレーニングの効果は、突然翼が潰れても,経験しておりますので,気持ちを落ちつけた判断ができるようになるということが最大の効果です。

私が翼の機能を回復させるため,自由落下状態を作り,その状態からブレーキラインを完全に開放しても翼が70パーセントしか回復せず,右翼端がラインに絡まった状態でも慌てなかったのは、マヌーバートレーニングのおかげだと思います

マヌーバートレーニングを体験して得た結論は、潰れを回復する動作は、3つしか無いと云うことです。これも、マヌーバートレーニングを体験して始めて理解できることなのです。

1 自由落下状態を作り出し,ブレーキラインを開放し,翼に一気に風を孕ませる。

2 機速を増して,内圧を上げてパラグライダーのインナーリブの通気孔を使って内圧の力により回復する。(恵古注……これは第2のと方法と同じでしょうか?それとも大潰れでないことが条件でしょうか?)

3 潰れたり,絡んだりしている部分に対する煽り(ポンピング)操作によりつぶれをなおす。

煽り(ポンピング)操作とは、ラインまたはライザーを引いたり,戻したりすることを意味します。

それでも,翼が機能を回復しない場合は,残る手段は緊急パラシュートを投げるだけです。

 コンペテイションの機体が、危険である理由は次のとおりです

 パラグライダーの翼の形状は,簡単に言うと,初級機は熊笹の葉のようにずんぐりしています。

 それが上級機になればなるほど、スピードと滑空比(1m落下に対して,何m進むか)を追求するため、縦・横の比率が高くなり,真竹の笹の葉状になります。当然不安定になるため,ピッチング(前後に揺れる)も大きく,長いものを操作するため,操作も微妙になります。

 操作が微妙になるということは、もともとパラグライダーはラインによる翼の遠隔操作が基本動作ですが、意図どおり機体を動かすことは容易ではなく、上級機は、一寸した操作で機体が敏感に反応する特性をもっていますので、外からの風の力と釣り合う適切な操作をするには、高度の技量が必要です。

 パラグライダーを販売する際に,販売店はパイロット技能証を確認するか,技能を確認できる人間が,パイロットにパラグライダーを販売しるように,指導しているのも,パイロットの技能以上のパラグライダーを販売する事によって,起きるであろう事故を防止するための対策です。

 さらに,空気抵抗値を減らすため上級機になればなるほどラインを少なくする傾向がありますので,翼端タックが発生した場合,翼がラインへ入り絡み込む危険が多くなります。

 風速10メートルを超える強風・乱流下であれば,私が経験した程度の異常飛行状態からでも、通常飛行に回復することは不可能と思います。その理由は、回復操作をしても,外から機体にかかる力(風の力)の方が、翼を正常に回復しようとしてパイロットが行う操作によってパラグライダーに加えられうる力に勝ってしまうと考えられるからです。

1 意図的に自由落下状態にし、自由落下状態から,ブレーキラインを開放しても,機体 が回復過程で、外の風によって、再度潰される可能性が大きいでしょう。

2 機速を増して,内圧を上げてパラグライダーのインナーリブの通気孔を使って内圧の力により回復しようとしても、外の強風と乱流の力に対抗できなければ回復できないでしょう。

3 潰れたり,絡んだりしている部分に対する煽り(ポンピング、ラインまたはライザーを上下に引いたり,戻したりすること)も、外からの風の力に邪魔されて予想通りの効果はないでしょう。

また高性能機で、高速飛行中であればなおさら危険が増します

回復動作を繰り返す間に,緊急パラシュートを投げるチャンスを失います。

回復操作をする間に機体は、加速的に急降下しますから、回復するためには十分な高度も必要です。私の場合,高度が100メートル以上低い高度(200m以下)であれば,無条件で緊急パラシュートを投げていたと思います。

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