第4回 危険な機体であることを立証 コンペ機と呼ばれる機体が、危険な機体であることを立証するためには、大潰れを起こすと、回復しにくい危険があったと主張するのが、わかりやすいでしょうね。早い段階で、メーカーに、試作機を使用したテストパイロットが、レスキューパラシュートを投げた事実の有無を照会するとかして、公表する義務を負わせるとか、できるといいですね。これは、刑事捜査のやり方についての提案でもあります。 パラグライダーについては、安全性のテスト合格機でなくとも、市販することが許されていますから、試作段階の機体が、マニュアルの交付なく、素人に廉価で提供される危険を防止するためにも、レスキューパラシュートを投げた事実の有無を公表させることは必要なことでしょうね。 しかし業者が自分に不利な情報公開をすることなんて期待できませんよね?そのためにも、翼の大潰れの際の数学モデルを作成することが大切なんです。滑空状態を前提としなければ航空力学でなく常識的力学の範囲内になる訳で、誰でも議論に参加しやすいのです。少なくとも現在まかり通っている滑空状態での航空力学による力の説明は、実は、パラグライダーの安全性に関する説明ではないことを理解してもらわなければなりません。航空力学の説明はパラグライダーの滑空時の力の説明に過ぎません。航空力学による力の解説は、翼が大潰れを起した場合には、妥当しないことをまず学問的に論証し、議論の前提としたいのです。 例えば西ヶ谷氏のCross Country誌 vol。2 1996年7月20日号には、小野寺氏のレポートとして、バーテイカルスピン証明さる!という見出しの記事があります。バーテイカルスピンとは、……急旋回を伴った垂直降下。速度と回転が加速し、パイロットは強いG(重力のこと?*恵古の注)を受ける。キャノピーは開いたまま、キャノピーは目の前にシューテイングし、リーデイングエッジがほぼ真下を向いて地平線と平行。パイロットは通常のフライト姿勢のままだが、ライザーは前方に向く……と定義し、バーテイカルスピンは航空力学で既に一般的に解説されているとする趣旨の記述があります。 パラグライダーが、急旋回を伴った垂直降下中であるということは、飛行中あり得る状態なのでしょうか?あり得る状態として、それは滑空状態を意味するのでしょうか?私は滑空状態ではないと思うので、「航空力学で一般的に解説されているバーテイカルスピン」、という記述の意味がよくわからないのです。しかし、ともかく、この状態では、まだ翼の大潰れは起こっていませんよね? 翼の大潰れが起こった場合にパイロットにかかる力の数学モデルは、恐らく、飛行速度と高度と気象条件に集約でき、パラグライダーの性能は関係ないのではないか?と考えているのですが、どうでしょうか。空中だから、どんな力がかかっても、衝突ということがないから、危険ではない、という議論もありうるでしょうね。でも滑空しないパラグライダーには墜落という避けることができない危険がありますから、やはり、この数学モデルの議論は有益ではないでしょうか? その結果を公表することにより、試作機の販売者に、大潰れを起こした場合の危険を予測可能であったとすることができれば、危険な機体が素人に販売されることを防止する効果を期待できますでしょう。テストパイロットが飛行中に、レスキューパラシュートを投げた事実があることも、危険の予測を可能とする事実です、その事実を知っていたのに隠して、機体を提供した者があれば、死の結果について予測があったとされ、犯罪行為と判断される可能性が増しますよね?そういう意味で、今後パラグライダーの安全のためには息の長い努力が必要と思われます。 事故機と同型機と見られる機体が、大潰れを起こすと、回復せず、危険であったらしいことは、雑誌などに掲載されていますよね。月刊パラワールド誌1998年ギア・カタログ特別号vol.82 20頁など。 しかし基本的にそれらの記事を根拠に、回避が可能であったか、不可能であったかを判断することは困難です。とどのつまりは、記事を書いた人や、現場に居た人の判断や、理由付け(弁解)が重視される結果となり、つまり機体が危険であったことが客観的に立証されたとすることができません、不確実(証人の証言内容次第ということになりかねない)なんです。更に雑誌等の記事は、様々な配慮から、結果としては、回避可能だった(レスキューパラシュートを投げて生還した)ことが前提とされています。飛行したときの条件が、使用機体の詳細についても、気象条件についても明らかでありません。これに対して、数学モデルの場合は、……一度苦労して、いいものを作成しさえすれば、後は具体的な条件を設定し、回避操作可能と判断するか、回避操作不可能と判断するかは、その場に居た者だけでなく、誰でも検討でき、判断が妥当か、妥当でないかを、みんなで客観的に判断することが可能となるからです。 先ほどのバーテイカルスピンの議論についても、翼が前傾し、パイロットの前方水平の位置関係を保ったことが議論の前提とされていますが、そういう位置関係は長く続くのでしょうか?翼とパイロットとの振り子運動は起こらない前提でしょうか?長く続かない位置関係なら、航空力学の問題ではないのではないでしょうか?
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