Background

基金設立の背景

1997年5月17日に起きた高山ホルンバレーカップ大会中の事故は3年後の2000年になってから裁判になりました。起訴までに時間が経ってしまったのは、当初、その事件性に気付くことが出来なかったからです。捜査した警察にも和泉さんご両親にも、パラグライダーに関する知識がほとんどありませんでした。捜査は競技会関係者の言い分をそのまま受け入れるしかなかったのです。警察調書や検証写真に登場する人物達は、起訴後、被告と被告側の証人と重なります。競技会関係者や和泉恭子さんと同じアエロタクトチームの選手達は口を揃えて恭子さんのミスだと決めつけました。しかし情報封鎖された中で、つじつまの合わない事からいくつもの疑問が湧きました。不誠実なウソが塗り重ねられ、機体や計器など証拠が消え、真実は闇に葬られようとしていました。疑問は晴らされるどころか、被害者の恭子さんに対する非難さえあったのです。真実が知りたい!遺族の切実な思いは、裁判を起こすしか残されていなかったのです。 裁判終結後、基金設立への思いをパラグライダーのBBS「風待ち」に寄せてくれた、和泉恭子さんのお姉さんの書き込みをご紹介します。

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風待ちの皆様へ 投稿者:おねえちゃん  投稿日:10月27日(水)09時01分4秒

この10月25日にやっと裁判が終わりました。
長い長い苦しい戦いでした。妹恭子の不慮の死というショックに加えて、その原因を知りたいという肉親として当然の希望が満たされず、やむを得ずとった手段について、遺族である私たちは、パラグライダー業界に敵対するものである、との非難に曝され、原告である両親は、傷つき、心身ともに疲れました。そんなとき、裁判所が、「和解」を提案されましたので、迷った末、受け入れることとしました。

風待ちの皆様には大変お世話になりまして、ありがとうございました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
この裁判は、妹恭子の遺族と、妹恭子のパラグライダーの仲間の戦いとなりました。そのため、パラグライダーや競技会のことが全く分からない遺族である私たちは、途方にくれました。その私どもに、援助の手を差し伸べてくださった方々が、競技を全くなさらない一般のフライヤーの方々と、風待ちの方々だったのです。

パラグライダー競技会で身内を亡くし、パラグライダーのことも、競技会の仕組みも知らない遺族の言い分を裁判所に届けてくださったのです。そのためには、いろんな方々の、筆舌に尽くせないお力添えなくしては、この内容での和解というものは、あり得ないものだったと言うことを、改めて感じております。感謝の気持ちで一杯です。

この風待ちに投稿されている皆様は、妹恭子同様、本当にパラグライダーを愛し、パラグライダーというスポーツをよりよいものにしていこうというお気持をお持ちです。真剣に議論され、人としての品性を高めていこうとされています。

これから先もずっと、和泉恭子という、パラグライダーが大好きだったのに、公式大会で、競技中、荒れた天候と安全でないプロト機によって、命を落としてしまった女の子がいたんだ、ということを忘れないで、思い出して頂きたいと思います。

この裁判を通じて、いろいろなことが問われました。今は詳しいお話をするのは避けますが、いずれ少しずつ整理して発表できたら、お知らせしたいなあと思っております。

そして、裁判をするには金銭的にも・体力的にも、大変な労力を必要とします。でも結局裁判で戦うことによってのみ、遺族は癒され、理不尽な仕打ちによるどん底の悲嘆から立ち直るきっかけを掴むことができるのです。

この「和解」によって得られた300万円というお金は、両親にとっては、支援して下さった方々の好意の証に外なりません。

そして、裁判所のご尽力により、この和解に表明された安全への誓いが、口先だけのことに終わらず、これから、ずっと、守られていくように願って、恭子の裁判が無駄にならないようにするために、和泉恭子基金を作りたいと思っています。
これから裁判を起こそうとしている方への支援に役立ちたいと思っております。

両親は和解金300万円に感謝の気持ちから200万円を上乗せし、500万円の基金にしたいと申しております。

恭子が好きだったパラグライダーというスポーツは、ごく最近まで、両親にとっては、実は、娘を奪った憎いパラグライダーでした。両親は、長い間その思いに苦しんでおりましたが、この度、事件解決を機に、その思いもふっきれ、いろいろな方々に励まされ、心からお礼を申し上げられる気持ちになりました。

最後に皆様のご活躍とパラグライダースポーツの発展を、心から祈っております。
本当にありがとうございました。

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以上がこの基金の設立の背景となった、ご遺族の率直なお気持ちです。
この裁判の経緯は私たち一般フライヤーにとって人ごとではありません。事故情報の隠蔽、責任逃れや、危険の放置など、未成熟なこの状況は未だ改善されていないのです。

この基金は、亡くなられた恭子さんが、大好きなパラグライダーのために残してくれた改善のシステムとして、安全に楽しめるパラグライダーの未来のために機能していきます。





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